麻薬やアルコールのように依存性のある糖質
糖質は、麻薬やアルコールと同様に依存性のあるシロモノということをご存じだろうか。
ところが、糖質過多の食生活がメタボリックシンドローム、糖尿病などの要因になっているにも関わらず刑罰も厳しい制限もない。なぜなら人に直接迷惑になる行為を誘発しない。炭水化物(糖質)が三大栄養素という概念が根底にあるからだろう。そして、何よりも砂糖や小麦粉(糖質)は食品業界にとり消費者を魅了する不可欠な食材だ。さらに糖尿病は医薬品業界にとってはドル箱だ。
このように、社会は糖質に甘く、糖質だらけの環境が当たり前なので、ごはん、パン、麺、スィーツなど糖質過多の食生活を毎日続けることができる。
まさか自分が麻薬やアルコールと同じ依存症に陥っているとは思わないだろう。ハッキリ言おう。甘いものを食べないとイライラする&気分が落ち込む、ごはんを止められないなどは、多かれ少なかれ糖質依存症だ。
「幸せホルモン」とも呼ばれる脳内で放出される神経伝達物質。通常は、困難な目的を達成した時などにドーパミンが放出され「やった~」と幸せな気分になりテンションが上がる。ところが、麻薬、アルコール、そして糖質は、”努力なし”でドーパミン放出が引き起こる。そしてこの快感が忘れられなくなり病みつきになっていく。
甘いもの依存から抜け出せない
皆さんにも起こりうる実例として、甘いもの依存症&肥満により肺血栓塞栓症で倒れ、生き方を改めた夫婦【File No.12】 を一読して頂きたいが、掲載のジョンは、脚の血栓が肺に流れ緊急入院した。
退院後はシビアな糖質制限、朝のウォーキングなど規則正しい生活を続け、減量や数値の正常化だけでなく、倒れてからわずか約2ヶ月半で脚の血栓が消えた。通院や薬の服用も必要なくなり、担当医もその回復の速さに驚いていたそうだ。
しかし、まだ甘いもの依存から抜け出せない。
チョコレートムース、ハチミツをタップリつけたクロワッサンを毎日思い出す。仕事で疲れると無性に甘いものが食べなくなる。メニューに肉類があっても、ピザ、パスタ、スィーツに目が行ってしまうので外食を控えている。誘惑と戦っている毎日だ。
塚本雅俊医師の所見:糖質依存とアルコール依存は同じ構図
つかもと内科 腎臓内科医の塚本雅俊院長は、ジョンの糖質依存から脱却する難しさは、以前診ていたアルコール依存症患者と同じ状況だと云う。
アルコールは街中にあふれかえりコマーシャルも多く、常に誘惑と戦わないと依存症にすぐ逆戻りです。以前私が診ていたアルコール中毒患者さんは入院すると一旦禁酒できますが、高齢の母親が神棚にお神酒を買うのをやめず、それを飲んでしまうことで飲酒再開となり、入退院を繰り返し亡くなりました。
糖質依存も全く同じ構図です。
糖質依存から脱却するには周囲の理解も必要です。アルコールの場合はかなり理解が進んで来ましたが、糖質に関しては、文化的・習慣的にごはんなどを摂取するのが当たり前、「食べないのは変人」的な考えがまだまだ残っています。
糖質制限中の糖尿病患者さんに糖質をすすめるのは、断酒できているアルコール依存症で肝硬変になりつつある患者さんに「たまにはいいじゃないか」などとお酒をすすめるのと同じです。理解不足から起こることとはいえ、相手の人生に与える影響に全く思考が及んでいない罪深い行動と思っています。
さらに、糖質をやめられないのを本人の意志の弱さに求めるのは、アルコール依存の患者の例を考えると無理がある話となります。当院の患者さんでも、身内の方が理解を示して協力してくれる患者さんはうまく制限が続きますが、家族が無関心だったり反対するようだと継続はかなり厳しいです。孤独でも続けられる方は相当意志の力が強いのだと思います。幸い、ジョンさんは奥さんと二人三脚で断糖生活を続けているようですね。
ジョンさんは“高度”の糖質依存症なので、今後も「ちょっとだけ」を絶対に許さない位の取り組みでないとやがて逆戻りになる可能性があります。糖質はアルコールや麻薬以上の依存性物質ですので、ジョンさんは今後も断糖を続けられることをお祈りいたします。
とは言うものの糖質依存にも幅がありますし、上手くコントロールできる患者さんには多少ゆるむ日があっても良いとお伝えしています。
ちなみに有名な”久里浜式アルコール依存症スクリーニング検査”では、毎日晩酌するだけでほぼアルコール依存との診断になります。『週2~3回、1回2杯まで、それ以上はアル中』ということです。
『週2~3回、1日お茶碗1杯のごはんまでならは許容範囲』糖質も同様の判定基準になるかもしれません。
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