「にくたまチーズ」を合い言葉にMEC食を推奨している産婦人科学会専門医 田中亜矢子先生が、ご自身の体験から糖質制限をおいしく簡単に続けられるアドバイスをして下さいました。特に女性には、カロリー重視のダイエットからMEC食に切り替え「イキイキ!キレイ!」な毎日を送って欲しいと願っています。
糖質制限が続けられない人にお勧めしたいMEC食
糖質制限は続かない、という意見をよく聞きます。食べられるものが無い、体調が悪くなった、ご飯やお菓子が我慢できない、などなどです。そこでお勧めしたいのがMEC食です。おいしく簡単に続けられる方法です。MEC食は、沖縄県のこくらクリニックの渡辺信幸先生が提案されている食事法です。
肉(Meat)卵(Egg)チーズ(Cheese)がメインの食事です。
1日にお肉200g、卵3つ、チーズ120gを基準量とする。1口30回よく噛んで食べる。
基準量はあくまでも最低の摂取目標量であり、足りないようなら空腹を我慢せずお腹がいっぱいになるまで食べる。
今までの食事から糖質を「抜く」のではなく、「糖質がほぼゼロ」の肉・卵・チーズをしっかり食べるという発想の転換です。
私とMEC食の出会い
画期的だった糖質制限
2011年11月に夏井睦医師の「新しい創傷治療」というHPを通じて糖質制限を知り、その明快な理論に目からうろこが落ちる気持ちになりました。早速、江部康二医師の著書を読んで始めたところ、体調はぐんぐん良くなりました。
詳細は以下の記事に譲りますが、体で糖質制限の理論が正しいことを実感しました。
続けたいのに続けられない糖質制限
糖質制限の良さは理屈でも体でも感じているにも関わらず、なかなか続きません。
もどき料理はつくるのに手間がかかり面倒なので、ついついお惣菜で食事を済ませがちになります。
糖質制限オフのスィーツは、満足感が無くて食べ過ぎてしまいます。そのうえ反動で糖質を無茶食いして反省する日々でした。
簡単でお気楽なMEC食
ある日夏井先生のHPで渡辺先生が提唱するMEC食を知り、著書「噛むだけダイエット」を読みました。なんだか簡単で楽そうです。
おまけに肉卵チーズをしっかり食べた後ならアイスクリームを食べても良いとのこと!
早速、気楽に始めました。
私がMEC食を勧める理由
- 簡単でおいしい
- 必須栄養素が摂れる
- 糖質依存から離脱しやすい
それぞれ説明していきます
1. 簡単でおいしい
◆ 買い物が楽な上に無駄がない
お肉と卵とチーズのみですから、まずは買い物が楽になります。買いだめしやすい食材ですので、安売りでたくさん買っておくことができます。お肉は冷凍して保存もできます。冷蔵庫の中がすっきりして、食材が傷んで廃棄することも減ります。
◆ 料理が簡単
お肉や卵は、塩コショウで焼くだけで美味しく食べられます。さらに煮る、焼く、蒸すといった調理法と調味料を変える、お肉の種類や部位を変える、といった方法でメニューを増やすこともできます。
「飽きてしまうのでは?」と言われますが、栄養が足りるからか飽きません。
「お金がかかる」と言われる方もいますが、買いだめや調理の工夫でコストは下げられます。
◆ 満足感が高い
必要なタンパク質や脂質をしっかり摂ると満足感が高くなります。
ステーキや焼肉を食べた時の満足感を思い出して下さい。何よりもお肉をかみしめるとあふれる肉汁や脂は、とても美味しいものです。食べ終わるとおいしさと満腹感で満ち足りた気分になります。
2. 必須栄養素が摂れる
◆ 体は何で出来ているか
性別や体形で違いはありますが、水分60%、タンパク質18%、脂質が18%、残りの3.5%がミネラル、炭水化物が0.5%と言われています。つまり水分を抜けば、人体はほぼ脂質とタンパク質で出来ています。
私たちの体は毎日新陳代謝をして組織を再構成しています。体をきちんと作るには主成分であるタンパク質と脂質が必須です。
◆ タンパク質は骨・筋肉・臓器をつくる
タンパク質は、骨や筋肉、臓器などの人体の構造を作ります。また体内の化学反応を進めるためにはタンパク質で出来た酵素が必須です。タンパク質は、アミノ酸が結合してできています。
アミノ酸の中で人体が合成できないものを「必須アミノ酸」と言い、9種類あります。必須アミノ酸はどれかが欠けると体内で有効利用されません。動物性タンパク質は、必須アミノ酸がバランスよく含まれていて人体が有効利用しやすいタンパク質です。
◆ 脂質は必須の栄養素
脂質は細胞膜やホルモン、神経組織は脂質で構成されています。脳に至っては実に60%は脂質で構成されており、人体に必須の栄養素です。
肥満や成人病の元凶のように言われていますが、摂取した脂質がそのまま皮下脂肪や内臓脂肪となるわけではありません。
気にされる方が多いコレステロールはホルモンや神経の構成成分であり、加えて体内の修復には必須です。体内のコレステロールのおよそ80%が肝臓で合成され、食事由来のコレステロールは薬20%と言われています。食事からの摂取量が増えても肝臓での合成量が減りますから、むしろ肝臓に優しいといえるでしょう。
◆ ミネラルも体に必要・・特に鉄
ミネラルはカルシウムやマグネシウム、鉄などの無機物を指します。骨のカルシウムなど体の構成要素の一つです。加えて補酵素として体内の代謝に関わっています。
特に、注目してもらいたいのが鉄です。赤血球の中のヘモグロビンという酸素を運ぶ色素を構成します。また体内のエネルギーを作る際の重要な補酵素です。つまり鉄が不足すると酸素を運べず体内のエネルギーを作れなくなります。
女性は毎月の月経で鉄を失いますので、とりわけ不足しやすいです。
赤身肉や卵の黄身には、吸収されやすいヘム鉄が豊富に含まれています。野菜やプルーンに含まれる非ヘム鉄は吸収率が低いので、動物性食品からしっかり摂取しましょう。
◆ 糖質は必須ではない
糖質を摂らなくてはエネルギー不足になると不安になる方がいますが、糖質をエネルギーとするのは赤血球のみです。他の組織では脂肪酸から合成されるケトン体をエネルギーとして使えます。加えて肝臓では糖新生と言って糖を合成することができます。
「必須脂肪酸」「必須アミノ酸」はありますが、「必須糖質」はありません。つまり、人体は食べ物として糖質を摂らなくても、エネルギー不足にはならないのです。
◆ 栄養素の吸収率が低い野菜
野菜や果物はビタミン豊富なイメージです。しかし植物の細胞は、人間には消化できない細胞壁に囲まれているため、栄養素の吸収率は高くありません。一方、動物性の食品は、実はビタミンやミネラルが豊富で吸収率も高いのです。
唯一ビタミンCのみが不足しがちになりますが、低糖質の葉物野菜やアボカドから摂取できます。
食物繊維は便秘などを解消してくれるイメージが高いですが、摂取した食物繊維は消化吸収できず便で排出されます。食物繊維の過剰摂取はむしろおなかが張る原因になります。
肉・卵・チーズでは便の量や回数は減りますが、スムーズに排便できるようになります。
3. 糖質依存から離脱しやすい
◆ 糖質は麻薬と同じ
薬物やアルコールを摂取すると脳が刺激されてドーパミンという物質を放出します。ドーパミンは幸福感をもたらします。このため同じ刺激を繰り返し求めるようになり、自分でコントロールできなくなるのが依存症の状態です。
糖質を摂取することで同様にドーパミンが放出されます。このため糖質を食べないとイライラして食べてしまい、効果が切れるとまた糖質摂取を繰り返す状態が「糖質依存」です。
これは私たちの脳の構造によるもので、努力だけで抜け出すのは大変困難です。
◆ 長年の糖質づけでエネルギーが作れない体に
糖質過多で低栄養な食事を続けていると、消化吸収能力が低くなり鉄欠乏になります。このため脂質やタンパク質を消化吸収出来なくなります。また脂質やタンパク質からエネルギーを作れない体になっていることがあります。
このような体になっている人は、糖質でしかエネルギーが産生されません。低糖質食ではエネルギー不足となって倦怠感や頭痛、冷え性の増悪といった症状が出ることがあります。またお肉や脂を食べられない人も多いですが、それは消化管の機能が低下しているためです。
その場合は一度少量の糖質を摂取しつつ、上手に高タンパク質、高脂質、低糖質の食事へと切り替えていく必要があります。まずはタンパク質や脂質、鉄分をしっかり摂取して体を作り直していきましょう。
逆に今までの低タンパク質、低脂質、高糖質食に戻してしまうと、根本的な原因は解決されないままとなってしまいます。
◆ 栄養をしっかり摂ることで 「満足感UP」&「体を作る」
糖質依存に対しては、おなか一杯にMEC食を食べることで糖質への欲求を減少させます。
低栄養な体も、MEC食による適切な栄養を摂りつづけることで消化吸収できる体に変わっていきます。
Whyではなく、Howで
最後に、糖質制限を続けるのは確かに難しいかもしれません。でも少し工夫するだけで、簡単に続けていけると思います。
「なぜ(Why)、私は糖質を食べてしまうのか」と悩まないでください。我慢も自己嫌悪も要りません。
「どうすれば(How)、糖質制限を美味しく楽しく続けられるのか」と方法を考えませんか。
MEC食はそれに対する答えの一つになると思います。
まずは気楽に、今日の夕食でお腹いっぱいに肉卵チーズを食べてみて、その美味しさと満足感を実感してください。
MEC食に興味を持たれた方は、ぜひ渡辺信幸先生の著書にも目を通してみてください。
『一生太らない体をつくる 噛むだけダイエット 』
『肉・卵・チーズで人は生まれ変わる 』
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