お取り寄せ満足度も90%以上!糖尿病のパティシエがつくる多種多様の低糖スイーツに掲載したル・ヴェール のオーナーパティシエ 高谷浩史(たかやひろし)さんは1型糖尿病患者だ。家族には誰も糖尿病患者はおらず遺伝的な原因ではない。大学時代サッカー練習でポカリスエットを飲み過ぎたことが引き金となり、ペットボトル症候群(急性糖尿病)を発症したのだ。
スポーツ時や真夏の水分補給としてポカリスエットを飲む人は多いと思うが、水代わりは危険だということを高谷さんの体験談で認識してほしい。1型糖尿病に関する糖質制限推奨医師のアドバイスも文末に記載した。
1日4リットルのポカリスエット=角砂糖56個分を飲んでいた
サッカー練習中に高谷さんが水代わりに飲んでいたポカリスエットの炭水化物(糖質)は6.2g/100mlもある。1本900mlのボトルだと 糖質は55.8g(角砂糖約14個分)となる。まさに「糖質ドリンク」と言っても過言ではない。
そのためかわずか1年でペットボトル症候群を発症した。ちなみに高谷さんは高校時代もスポーツをやっていたが「水分補給はダメ」とスポーツ根性モノの指導だったそうだ。どちらも極端だ
大学時代の「糖質ドリンク」歴
- 大学1年 サッカーを始めた。汗だくになるので最初の頃は水やお茶を飲んでいた。しかしもの足りなくなりポカリスエットと100%オレンジジュースを水代わりに飲み続ける。
- 大学1年春休み 体に良いと思い100%オレンジジュースを飲み続ける。
- 大学2年5月 試合前の激しいサッカー練習でさらに喉が渇くので1ℓサイズのポカリスエット、コーラ、オレンジジュース等を一気飲みしていた。コーラはお腹が膨れるのでポカリスエットとジュースがメインとなり、その摂取量も1日2 ℓ⇒ 4ℓに増えていった。恐ろしいことに飲み物だけでも毎日糖質223.2g=角砂糖56個を摂っていたことになる。そして体は一気に糖質を吸収して高血糖状態になっていたはずだ。
- 大学2年6月~7月 30分に1回の割合でおしっこをしたくなり(多尿)、朝起きるとトイレばかり行く。70分の講義でも2回はトイレへ行くので、とうとう学校へ行けない状況になってしまった。しかし、喉は渇くので2ℓのポカリスエットや100%ジュースは相変わらず飲んでいた。多尿や喉の渇きは糖尿病の症状だ。
測定不能、血糖値が500mg/dになっていた!
大学2年のお盆休みにフラフラになった状態で帰省した。その頃には身長168cm、体重は62.3kgから38kgに落ちていた。
心配した両親が病院へ連れて行くと、血糖値500もあり測定不能。即入院となり、1日5回のインスリン注射で血糖値は110までに下がり危険状態は回避したが、血糖値を下げるためにインスリン分泌を続けた膵臓は疲弊してしまい、その機能は損なわれてしまった。
高校時代はレーシングカヌーの国体選手にまでなった高谷さんはずっと筋肉質で太っていない。さらに急激な血糖値上昇ということもあり、1型の急性糖尿病だと診断された。
こうして、20歳の若さでインスリン注射と糖尿病の食事療法であるカロリー制限の生活が始まった。
糖尿病の症状が進む
大学時代は時間があるのできちんとカロリー計算をした食事を続けていたにもかかわらず、HbA1Cは9%から下がらない。※ 健常人のHbA1Cは4.6%~6.2%
時間の取れない社会人となるとインスリン注射は打っていたが、シビアなカロリー計算による食事は続けられず、通院も不定期になっていった。
発病してから25年の間、通院、インスリン注射、カロリー制限の食事療法を続けた。
糖尿病の通常の食事療法だとごはんなどの糖質類(炭水化物)はしっかり摂るので、たとえ薬を投与していても症状は進む。高谷さんの場合もそうだ。発症から25年の間に、HbA1Cは上がり続け11.7%~12%になってしまった。だるさも緩和しない。朝が起きられず、夜突然眠くなる状態のままだ。
糖尿病患者はごはんはNG!
症状が改善しないので、2017年9月に入ったFBの糖質制限グループの情報をきっかけに、その年12月初旬に糖質制限を始めた。
しかし、1日の食事内容を伺うと、朝と昼はごはんを食べないが、夜に茶碗1杯半のごはんを食べていると躊躇なく答えてくれた。高谷さん本人は糖質制限をしていたつもりが、糖尿病患者にはNGのごはんを食べていたのだ。
どうやら、糖質制限をきちんと理解していなかったようだ。深夜の血糖値125(空腹時)⇒250位に上がる原因が、糖質量80g(ごはん1杯半=角砂糖20個分)のごはんにあることも気付いていなかった。
糖尿病患者さんは、医師推奨の糖質制限食のやり方を理解して頂き、3食ごはんなし、糖質量1日30g~60gのスーパー糖質制限を実践して欲しい。
高谷さんに奨めた糖質制限食
夕食が遅くなりがちな高谷さんに、まずは夕食のごはんを止めて肉類のおかずを奨めた。「肉類は消化に良いので夜食べても胃もたれしません。胃もたれするのは消化の悪いごはんと一緒に食べるからです」と伝えるとかなり驚いていた。
肉類の味つけは甘いタレではなく、シンプルに塩やこしょう(ハーブ入りソルトもOK)を奨めた。ごはんを食べないので塩味も薄味になる。
タンパク質や脂質が充分取れる卵は1日2個。葉もの野菜はOKだが、イモ類、根菜(レンコン、ごぼう)、大豆以外の豆類はNGだ。
クルミやアーモンド、チーズはお奨めのおやつだ。
カロリ-制限による通常の糖尿病食事療法ではマヨネーズ、バター、ラード、オリーブオイルなどは制限すべき食品だが、糖質制限では糖質ほぼゼロなので血糖値を上げないOK食品であること。さらに脂質が中性脂肪を増やさない!コレステロール値を上げない!ことも伝えた。
糖質制限6ヶ月目の良好な結果
ごはんはピタリと止めた。そしてお腹が空いたら食べる食生活に変え現在は1日1食になった。夜間の準備でお腹が空く時はゆで卵を何個も食べているそうだ。
「僕の糖質制限はゆるやかです」と仰るが、糖質制限を始め6ヶ月目のHbA1Cは8%まで下がった。密かに糖質制限をしているので担当医が首をかしげているそうだ。体調はすこぶる良く、朝はしっかり起きられる。しかし体重は70kgのままで減量には至っていないのは、糖質を少なからず摂取しているためだ。
高谷さんは持続性血糖測定器Free Style Libre(フリー・スタイル・リブレ)を装着して1時間おきに自分で血糖値を測定している。1型糖尿病は血糖値が乱高下する傾向があるが、糖質制限を始めて日中の血糖値は70~150で推移。就寝前でも100〜120位、就寝中も起床時もはそのまま落ち着いているそうだ。
しかし「糖質の少ない食品はなら変化はあまりないのですが、炭水化物やケーキでも通常のものを試食したりすると、200前後まで一気に上昇します。気持ちはありがたいのですが差し入れのパンなんかは困ったもんです」と苦笑する。
糖質制限により血糖値が上がらない体にインスリン投与をすると低血糖になるリスクがある。そこで高谷パティシエの低糖スィーツ・ファンの吉田内科クリニック の吉田先生に糖質制限実践に伴う薬の投与量、食事内容の指導して貰ったが、今でもインスリン注射量を間違えると寝てる間に中低血糖になっているそうだ。
吉田先生のアドバイス
10年近く糖質制限推奨医師として糖尿病患者さんと向き合っている吉田先生のアドバイスだ。
■ 急性の糖尿病(ペットボトル症候群)の場合、1型と2型に分かれる。2型であれば糖質制限や投薬で治るが、1型の場合は糖質制限を実践しても完治しない。
■ 1型の人は少しの糖質量でも一気に血糖値が上がるので「ちょっとなら糖質を食べても大丈夫」というのはNG!
■ 1型の人は動いて筋肉をつかうと血糖値が上がることも覚えていて欲しい。
■ 糖尿病を発病してからの期間が長い人は、症状が出ていなくても、血管、心臓などの循環器系疾患が潜んでいる可能性が高いので循環器系の検査を必ず受けて欲しい。
■ 1型の高谷さんは学生時代の糖質の多い飲み物が1型糖尿病発症の引き金になってしまったが、飲んでいなければもっと後に引き延ばせたかもしれない。
■ スポーツの後大量に水分補給が必要な場合は、ミネラルウォーターか経口補水液(ORS)を飲むことを奨める。電解質系のドリンクでも糖質の多いスポーツドリンクはNG!
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