蒸し暑い夏、スーパーや薬局などの店頭に電解質系ドリンク、塩飴、ゼリー飲料などの予防食品が陳列されていますが、果たしてこれらが熱中症や夏バテ予防の適切なアイテムなのでしょうか?
糖質制限推奨医師に伺うと、予防よりもこれらの”糖質の多い”予防食品を摂ることで起こるリスクの方が高いようです。そこで医師が奨める適切且つシンプルな熱中症対策や市販されている低糖予防食品をご紹介します。
予防よりも怖い体へのリスク
予防アイテムに限らず糖質の多い食品で起こる体へのリスクを挙げてみます。
■ ペットボトル症候群
糖質の多い飲みものを大量に摂り続けると、ペットボトル症候群(ソフトドリンク・ケトアシドーシス)という急性の糖尿病を発症することもあります。ペットボトル症候群になると、高血糖状態が続き、喉が渇きます。症状が進むと糖尿病性ケトアシドーシスとなり、多尿、腹痛、意識がもうろうとなり、重篤な場合は昏睡状態から死に至ることもあります。
サッカーの練習でポカリスエットを水代わりに飲みまくりペットボトル症候群(急性糖尿病)を発症したパティシエの記事に、その怖さが掲載されていますのでご一読下さい。
■ 血糖値スパイク(グルコーススパイク、ブドウ糖スパイク)
食後1時間以内に血糖値が140mg/dl以上に一気に上がることを血糖値スパイクと呼びます。糖質の多いドリンクやアメは糖質の吸収スピードが速いので血糖値スパイクが起こる確率が高く、特に膵臓機能が低下してくる40代以上の人や糖尿病予備軍の人は血糖値スパイクになりやすいです。
健常人は膵臓からインスリンが分泌されて血糖値が下がりますが、このように血糖値の乱降下がひんぱんに起こると、正常な血管の内側の細胞が壊れていき血管障害から動脈硬化が進行し、心筋梗塞、脳梗塞などのリスクを高めます。怖いのは、自覚症状がないので、サイレントキラー(静かなる殺人者)と呼ばれるように、ある日突然、病に倒れます。
■ 糖 化
ずばり老化を促進させます。余分な糖が体内でタンパク質と結びつきタンパク質が変性してAGEs(糖化最終生成物)を生成。シワやシミだけでなく、特集記事”もっと” 糖質制限を知ろう - 糖質制限推進派医師監修に掲載されている整形外科医の花岡篤哉先生によると、骨粗しょう症やばね指なども糖化が原因だそうです。糖質の多い食品はエイジング(老化促進)食品と言えます。
■ 体重増加
糖質摂取で上がった血糖値を下げるインスリンは別名「太るホルモン」と呼ばれ、体で使用されない糖質を中性脂肪に換えます。
水分補給のために糖質の多い飲料を飲んでいませんか?塩分補給のために塩飴をなめていませんか?食欲がないと素麺や果物などを食べていませんか?量を食べていないのに太るのは糖質過多のためです。
糖質制限推進派医師が奨める熱中症対策
医師に聴いた役立つ糖質制限アドバイス に掲載されている内科医吉田光範先生に熱中症対策を伺いました。
- 夏場の熱中症対策としても”糖質の多い”飲料を摂ることは避けて下さい。水分補給は水や麦茶などをこまめに飲むだけで充分です。
- 糖尿病の人、糖尿病予備群を含むメタボリックシンドロームの人は、”糖質の多い”予防品目はすべてNGです。
- 食事から必要な塩分はしっかり摂取できるので、塩飴などでわざわざ塩分を補給する必要はありません。
- 爽やかな低糖飲料として、レモンの輪切り1切れ(糖質1g以下)やはちみつ漬けではない梅干を水や炭酸水で割っても良いでしょう。酸っぱいのが苦手な人は糖質ゼロの天然甘味料ラカントSを加えても良いでしょう。
- 疲労回復には酢を飲む代わりに、酢を使った豚肉料理をお奨めします。但し、砂糖やみりんの味付けはNGです。
たくみなキャッチコピーで誘導されるヘルシーイメージ
メーカーはたくみなキャッチコピーで「体に良いんだ!」と思わせます。その事例を見てみましょう。
ポカリスエット
「発汗により失われた水分、イオン(電解質)をスムーズに補給するための健康飲料です。」「電解質溶液ですので、体内にすばやく吸収されます。」云々〈参照:大塚製薬ポカリスエットウェブサイト〉とあります。
これを読むと「水分補給ができる電解質の健康飲料」のイメージが湧きます。
今度は糖質量の視点から見てみましょう。
原材料は多い順に、砂糖、果糖ぶどう糖液糖、果汁、食塩等、ほとんどが糖質(炭水化物)【6.2g/100ml】です。喉が渇いたからと自販機で買うボトル1本(500ml)を飲むだけで【糖質31g(角砂糖約7.8個分)】を摂取したことになります。※ 炭水化物=糖質+食物繊維。食物繊維が含まれていないので炭水化物=糖質です。
電解質健康飲料と言うよりむしろ糖質過多飲料と言えます。
また、すばやく吸収されるので、血糖値が一気に上がります。つまり、高血糖スパイクが起こりやすい飲料とも言えます。
飲 む 酢
2018年7月7日付日経新聞NIKKEI プラス1に飲む酢のお奨めランキングが掲載されていました。「夏バテの時期飲む酢ですっきり」「果汁などで飲みやすくした商品」とありますが、”賢者の消費者”になる必要があります。
1位に選ばれた〈のむ檸檬酢〉のウェブには原材料表示はありますが栄養成分表示がないので、メーカーに直接問い合わせました。
「糖質はあります。お子様にも飲みやすいように余り酸っぱくしていません。」担当者の言葉通り、レモン果汁の酸っぱさを和らげるために、ビートグラニュー糖、蜂蜜、純リンゴ酢が入っています。糖質は【51.7g/100ml】。
「ほのかな苦味が夏向き」と新聞のキャッチコピーにあるお奨め希釈量3倍で割ると、コップ1杯(180ml)で、糖質31g/60ml=角砂糖7.75個分を飲んでいることになります。
2位の〈梅ごこち〉のキャッチコピーも消費者の心をつかみます。「香り高い和歌山県産の南高梅を、りんご酢とオリゴ糖、はちみつなど体によい糖にゆっくり漬け込み、梅から抽出されたクエン酸、お酢の酢酸がたっぷりの体にうれしい梅とお酢の健康飲料です。」〈参照:トキワウェブサイトから〉
しかし、こちらも、糖類(果糖ぶどう糖液糖、オリゴ糖、パラチノース)やはちみつを使用しているので、炭水化物(糖質)は多く【55.2g/100ml】もあります。コップ1杯(180ml)でつくる飲む酢を、お奨め希釈量2倍~4倍で作ると、糖質49.7g/90ml=角砂糖12.4個分~24.8g=角砂糖6個分)となります。これでは含まれているクエン酸1000mgや酢酸860mgの疲労回復効果も半減です。
いつも甘いものを食べていると味覚が麻痺しているので、甘みが強くないとおいしく感じません。さらに酸っぱい酢をおいしく飲める味は甘みを強くするしかありません。逆に、低糖人になると味覚が敏感になるので上記の量で作った飲む酢は甘すぎて飲めなくなります。
糖質の多い塩飴、ゼリー飲料もNG!
メーカーのイメージ戦略にのった塩飴やゼリー飲料なども夏場の予防商品として陳列棚に並びますが、糖質が多いのでお奨めしません。
写真掲載の糖質量1粒をチェックすると、〈匠の塩飴〉3.82g=角砂糖約1個分、〈塩すいか飴〉2.87g=角砂糖約0.7個分もあります。塩分補給として1日に何粒も塩飴をなめていませんか?
夏バテで食欲がない時の食事の代用品としてゼリー飲料を飲んでいませんか?栄養成分表示をチェックしてみてください。熱中対策ゼリー1袋(150g)で、糖質23g=角砂糖約5.8個分もあります。体の中で、高血糖スパイクが起こっているかもしれません。
市販されている低糖な電解質系ドリンク、ゼリー飲料、塩飴
市販されている低糖予防食品をわざわざ購入する必要はないと思いますが、脱水症状時の非常飲料用としてご紹介します。
■ 電解質系ドリンク
電解質系ドリンクを飲用したい人は、低糖の経口補水液(ORS)が安全ですが、ペットボトル1本(500ml)で糖質量10g以上になるものがあるので、必ず栄養成分表示をチェックして下さい。
糖尿病の方が1本を飲みきるのはお奨めしません。
【赤穂化成】熱中対策水 ZERO
【炭水化物0g/1本(500ml)】
赤穂の天盬(あましお)でお馴染みのメーカーがつくった糖質ゼロ(レモンとぶどう味のみ)の飲料水です。
【大塚製薬】経口補水液OS-1
【炭水化物≒糖質12.5g/1本(500ml)】
CMでお馴染みのOS-1。軽度から中度の脱水症状の人向きです。
【大塚製薬】経口補水液OS-1 ゼリー
【炭水化物≒糖質5g/1個(200g)】
ゼリー状なので脱水症状時、そしゃく・えんげ困難な人(お年寄りなど)向きです。
【コカ・コーラ】アクエリアス経口補水液
【炭水化物≒糖質13.5g/1本(500ml)】
【大塚製薬】ポカリスエット イオンウォーター
【炭水化物≒糖質 6.75g/1本(250ml)】糖質量は上記アクエリアス経口補水液と同量です。
■ 低糖塩飴
低糖と言っても1粒の糖質が2g~2.6g以上があるので、1日5粒以上はNGです。
【森永】in 塩分+ タブレット
【炭水化物≒糖質2.1g/1粒】
【Kabaya】塩分チャージ タブレッツ
スポーツドリンク味【糖質2.56g/1粒】 塩レモン味【糖質2.57/1粒】
熱中症対策に糖質ゼロの水やお茶などで水分補給は必要ですが、糖質を制限しタンパク質と脂質をしっかり摂る食生活になるとスタミナが持続する体〈ケトン体体質〉に変わっていくので、夏バテになっている低糖人は少ないようです。
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