従来の糖尿病や減量などの食事療法はカロリー基準でしたが、糖質制限の基本は「糖質」を控え、体をつくる「たんぱく質」とエネルギー源になる「脂質」をタップリ摂る!ことです。
医師推奨の糖質制限食のやり方
医師が推奨する「糖質制限食」「ロカボ」「ローカーボダイエット」をご紹介します。
江部康二医師推奨 3タイプの糖質制限食
糖質制限食の第一人者である江部康二医師は、2002年糖質制限食を自身の糖尿病の食事療法として実践。減量に成功しただけでなく糖尿病も克服しました。現在、糖質制限食を多数の糖尿病患者や医師に指導しています。Dr.江部流 3つの糖質制限食のキーワードは「ごはんは控え、おかずをいっぱい食べよう!」です。
◆ スーパー糖質制限食
朝食+昼食+夕食【基本:3食ごはんを抜く】
糖質の摂取量は、1食あたり10〜20g、1日30〜60gを目標にします。【 摂取量の目安:糖質12%、脂質56%、たんぱく質32%】
ごはん1杯で糖質が約55gもあるので「3食ごはん抜き」がスーパー糖質制限食の基本になります。ごはん以外にも糖質の多い食材(麺、パン、イモ類、根菜、果物、スィーツなど)や調味料も制限しますが、カロリーを気にせずに低糖質の肉、魚、卵、チーズ、ナッツ類などをタップリ食べることができます。野菜は葉ものやブロッコリーなどがOKです。
糖質量に関しては、【改訂版】糖質の多い食品と少ない食品でチェックして下さい。
糖尿病の食事療法向きです。即効性があるので糖質制限食をはじめる前にを必ずご一読下さい。
減量やメタボリックシンドロームの改善を目指している方にも、最初からスーパー糖質制限食をお奨めします。1~2週間続けると減量だけでなく体の変化に気づくはずです。この状態になると「もう少し続けてみようか!」と思うようになります。減量効果に関しては、男性の方が女性より早く効果が現れます。
mスーパー糖質制限食により、糖質の代わりに脂肪がエネルギーになる体質に変わるので、痩せるだけでなく元気に動ける体に変わっていきます。エネルギー源になる脂質はタップリ摂って下さい。
◆ スタンダード糖質制限食
朝食 or 昼食+夕食 【基本:2食ごはんを抜く】
1日の糖質の摂取量は70〜100gを目標にします。【摂取量の比率】糖質27%、脂質45%、たんぱく質28%】
1食だけ主食やパンを朝食か昼食に食べることができますが、スーパー糖質制限と同様に糖質の多い食品の摂取は極力控えて下さい。
◆ プチ糖質制限食
夕食【基本:1食ごはんを抜く】
1日の糖質の摂取量は110〜140gを目標にします。【摂取量の比率: 糖質41%、脂質38%、たんぱく質21%】
普通食の糖質摂取量は1日300g以上と推測されますので、プチ糖質制限食でも半分以下の糖質量となります。直ぐには効果が現れませんが「最近太ってきた」と感じている人向きです。糖尿病の食事療法には不向きです。
Dr.江部流 糖質制限食10箇条
- 魚介・肉・豆腐・納豆・チーズなどのたんぱく質や脂質が主成分の食品はしっかり食べる。
- 糖質の多い食品で、特に白いパン、白米、麺類、菓子、白砂糖など精製された糖質の摂取は極力控える。
- やむを得ず主食を摂るときは、未精製の穀物(玄米、全粒小麦など)を、日頃の運動量に応じて適量摂るのが好ましい。
- 牛乳、果汁を避ける。成分無調整の豆乳、水、番茶、麦茶、ほうじ茶などが好ましい。
- 糖質の少ない野菜、海藻、きのこ類は適量食べて良い。果物は少量にとどめる。
- オリーブオイル、魚の油(EPA、DHA)は積極的に摂る。リノール酸は減らす。
- 砂糖未使用のマヨネーズやバターも大丈夫。
- 蒸留酒(焼酎、ウイスキー、ブランデーなど)は飲んでも大丈夫だが、醸造酒(ビール、日本酒など)は控える。
- 間食やおつまみなどはチーズ、ナッツ類を中心にして適量を摂る。菓子類、ドライフルーツ類は不可。
- できる限り、化学合成の添加物の含まれていない食品を選ぶ。
主食を抜けば糖尿病は良くなる2[実践編]著者江部康二より
まちがっている〈自己流〉糖質制限
- 糖質だけでなく脂質も制限するのはまちがいです。
- 脂質・たんぱく質は十分摂取して構いませんが、1日3000kcal以上を食べたら、糖質制限食でも痩せません。
- 甘いモノだけが糖質の多い食品ではありません。砂糖を使用していないせんべい、おかきなども糖質はたっぷりあるのでNG食品です。
- 野菜でも根菜類、いも類は糖質が多いので注意が必要です。
- 糖質少ない葉野菜でも、炒めたりして大量に食べるのは困ります。
- 健康的といわれる食品でも糖質が多ければNG!例えば、玄米、雑穀米、蕎麦は糖質がたっぷりあるので基本はNG食品です。
Dr.江部が食べている「糖質制限」ダイエット・1ヶ月献立レシピ 著書江部康二より
山田悟医師推奨 ロカボ(ゆるやかな糖質制限食)
糖尿病専門医Dr.山田流は、ごはん抜きが無理!という人にお奨めします。
糖質の摂取量は、1食あたり20〜40gの食事を3食摂りさらに1日10gまでの間食はOK。1日70~130gを目標にします。1食でごはんを茶碗半膳にします。トーストなら半切れ、イモ類を抜いたおかずを多目にすることで満足感が得られます。また、調味料も余り気にしなくて良いので制限しやすい方法です。
「ロカボ」マークが入った食品(パン、スィーツなど)は、糖質1個が10g以下です。気をつけて頂きたいのが、1袋に入っている食品の糖質量ではありません。
リチャード・バーンスタイン医師(米国)推奨 ローカーボ・ダイエット
米国はLow-Carbohydrate Diet(ローカーボ・ダイエット)の先進国です。ローカーボ・ダイエット先進国の中でも草分け的存在のバーンスタイン医師は、糖尿病専門医であり、自身のI型糖尿病の治療法を暗中模索する中、糖質を控えることにより血糖値コントロールが良好になることを発見し、40年間実施してその有効性を証明しました。
炭水化物の摂取量を、1食あたり43g以下で、1日130g以下を目標とします。
山田悟医師が科学的根拠に基づく糖質制限食として位置づけ、2012年の時点では「この数値が最も信頼性が高い。」と評価しています。なお、米国では糖質制限食のことをLow-Carbohydrate(低炭水化物)Dietと呼んでいます。
プラスα のアドバイス
◆ ごはんは食事の最後に
日本大学グループの研究で、ごはんを食べる時に、たんぱく質、脂質、食物繊維(野菜)のおかずを一緒に摂ると、ごはんだけ、ごはん+2品目(例:たんぱく質+脂質のみ)よりも、食後の血糖値が上がりにくくなることが証明されました〈British Journal of Nutriion誌 2014:Vol.111〉。
ごはんは最後に摂ることをお奨めします。最初に糖質の少ないおかずをたっぷり食べた後では、主食の量が少なくても満腹感を味わえるので一石二鳥です。
また、ごはんに合うおかずはどうしても味が濃くなりがちなので、おかずだけの食べ方になると自然と薄味が好みになり減塩対策にもなります。
◆ プロテイン(たんぱく質)ファースト
食物繊維を摂ると糖の吸収が抑えられ血糖値の上昇がゆるやかになるので、食事の最初に食べること「ベジ(野菜)ファースト」が知られていますが、糖質制限食では必要な栄養が摂れる「プロテイン(たんぱく質)ファースト」をお奨めします。まずは肉類、魚類などおかずから召し上がって下さい。
お付き合いなど普通の食事をする時は、食物繊維の多い海藻類、きのこ類、豆類、木の実を「ベジファースト」として最初に召し上がって下さい。ただし根菜類(ごぼう、れんこんなど)は、食物繊維は豊富ですが糖質が多いので控えてください。
余談ですが、レタスは食物繊維が少ないため「〇〇はレタスの〇〇倍の食物繊維を含んでいます」と比較対象品になっています。
◆ 脂質は気にせずに摂りましょう
糖質制限食では、糖質を減らした分、脂質やたんぱく質が増える食事になります。「カロリーの高い脂ものを摂ると太る。」というイメージがありますが、太る原因は糖質であり脂質ではありません。 ※ 太る原因は、肥満のこと、痩せるためのエトセトラ をご一読ください。
またLDLコレステロールが上がることを気にする人もいますが、男性は正常値に改善されることが多いです。閉経女性は総コレステロールが上がる場合もありますが、多くの糖質制限推進派医師は問題ないと判断しています。
日本人は動物性脂質を摂取してもしなくても心筋梗塞のリスクは変わらないこと、さらに脳卒中のリスクは軽減することが、複数の研究機関で明らかになりました。
◆ 積極的に摂って欲しい脂質(脂と油)の多い食品
多くの糖質制限推奨医師が積極的に摂っている脂質が多い食品です。
- MCTオイル、ココナッツオイル(中鎖脂肪酸)、バター:ケトン体エネルギーをつくります。ブドウ糖は瞬発的エネルギーですがケトン体エネルギーは持続的なので疲れ知らずの体に変わっていきます。
- エゴマ油、アマニ油、しそ油(オメガ3系):必須脂肪酸です。体内でエネルギーになりやすく、HDLコレステロールを増やします。必要に応じて体内でEPA・DHAになります。
- オリーブオイル(オメガ9系):必須脂肪酸です。血液をサラサラにします。
控えてほしい油は、リノール酸が主成分の大豆油、コーン油、紅花油(オメガ6系)の植物性油です。必要量は1日1~2gですが、最近の食事では過剰摂取気味です。自然界に存在しないトランス脂肪酸のマーガリンも控えて下さい。また、長時間使用した揚げ油で揚げた食品もお奨めしません。
肉類はエネルギー源になる脂質だけでなく、たんぱく質も含んでいるので積極的に摂って下さい。
アーモンドやクルミなどのナッツ類は、血液をサラサラにする脂肪成分(オレイン酸、αリノレン酸)が多く、小腹が空いた時のおやつ代わりにも活用できる食品です。
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