2016年(平成28年度)厚生労働省の「国民健康・栄養調査」結果によると、糖尿病有病者と糖尿病予備群が合わせて約2,000万人という数が報告されています。
2020年から世界中に蔓延している新型コロナウイルスの感染者の多くが、糖尿病などの基礎疾患がある人と言われています。つまり日本人の6人に1人の糖尿人は、新型コロナウイルスの感染リスクが高くなっていると言えます。
ところが、マスク装着、手洗い、ソーシャルディスタンスなどの感染症対策は浸透していますが、糖尿病の主な原因となる「糖質づけの食生活」の改善は、ほとんどされていないのが現状です。
そこで、糖尿病の原因や合併症の怖さなどを知り、糖質制限による糖尿病予防、免疫力のある体づくりに取り組んで頂けたらと願っています。
糖尿病とは
インスリンの作用不足により、血液中のブドウ糖(血糖)が高くなる病気です。血糖値が高い状態(高血糖)が続くと血管が障害されて、さまざまな臓器に合併症(糖尿病合併症)が起こるリスクが高くなり、免疫力が低下します。
食事などで糖質を摂ると、その直後から血液中の血糖値が高くなります。健康な人であれば、膵臓から分泌されるインスリンにより、食後2時間位で血糖値が正常に下がります。ところが、糖尿病の人は、分泌されるインスリンが少なかったり、その効き目が悪かったりして、血液中のブドウ糖を体内にうまく取り込めず、高血糖のままになります。
糖尿病の原因
糖尿病の原因は、なりやすい体質や遺伝もありますが、糖質過多、肥満、運動不足、ストレス、加齢、妊娠などがあります。
◆ 糖質過多の食生活が最大の原因
糖質の多い食品を摂ると血糖値が上がります。すると血糖値を下げるために、膵臓は大量のインスリンを追加分泌します。「糖質づけの食生活」は、インスリンの分泌量が追いつかなくなり、高血糖の状態が続くことになります。そしてインスリンが分泌される膵臓のβ細胞がどんどん壊れることになり、分泌能力が低下します。こうして糖尿病が発病します。
◆ 肥満が原因
肥満は、糖尿病になる原因のNo.1と言われています。肥満で体脂肪が増えると、脂肪細胞から分泌されるホルモンの作用でインスリンが効きにくい状態になります。そのため血糖値を下げるために、膵臓から大量にインスリンが分泌されます。これが繰り返されると膵臓が疲弊して、インスリンを余り分泌できなくなります。肥満の原因も糖質です。
◆ 運動不足が原因
運動不足により、口から入れた糖質(ブドウ糖)がエネルギーとして使われず、体脂肪として蓄積されます。体脂肪が増えると、上記で説明した通りインスリンの働きが悪くなります。
◆ ストレスが原因
ストレスは、インスリンの作用を弱め、インスリン抵抗性ホルモンを分泌させます。そのためインスリンの働きが弱くなり血糖値が下がらなくなります。※ 過度の運動も体にはストレスなので血糖値が上がる場合があります。
◆ 加齢が原因
加齢は、膵臓の働きが弱くなりインスリンの分泌量が少なくなります。そのため血糖値がなかなか下がらず高血糖の状態が続いてしまいます。
◆ 妊娠が原因
妊娠中は、胎盤から分泌されるホルモンがインスリンの働きを邪魔するため糖尿病になりやすくなります。通常、出産後に血糖値は正常に戻りますが、戻らない方もいます。妊娠を繰り返すことで、糖尿病リスクが高くなります。
糖尿病の種類
糖尿病は、I型とII型に分類されます。
◆ I型 糖尿病
インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が壊れてしまい、全くインスリンが分泌されなくなります。
発症するのは子供や若い人が多い傾向にあります。最初は風邪に似た症状が出ます。その後、のどが乾く、トイレが近い、急激にやせるなどの症状になり、放っておくとケトアシドーシスに陥るので直ちに治療が必要です。
小児糖尿病の多くは1型でしたが、最近では肥満児の2型糖尿病も増えてきています。
◆ II型 糖尿病
遺伝的に糖尿病になりやすい人が、過食、肥満、運動不足、ストレスなどの生活習慣が原因で、インスリンの働きが悪くなり発症します。
自覚症状がないので、いつ発病したのかわからないまま、人間ドッグや健康診断などで見つかるケースが多いです。日本では95%以上の糖尿病患者がこのタイプになります。
糖尿病合併症
◆ 合併症のリスク
糖尿病の初期は特に自覚症状がないので、血糖値が高いと言われても食事療法や治療を軽視し、気がついた時には怖い合併症になっている人が大変多いので、手遅れにならないようにして下さい。
◆ 3大合併症
- 糖尿病性網膜症=初期から血糖値が良好に維持されていれば発症することは殆どありませんが、放置すると失明に至る場合があります。
- 糖尿病性腎症=糖尿病になり10年以上経過して徐々に蛋白尿が現れ、むくみを来たし、腎機能が悪化します。人工透析を受ける人の原因疾患の第1位を占めています。
- 糖尿病性末梢神経障害=手足のしびれや痛みを感じるといった症状が出ます。悪化すると手足の組織が壊疽するため切断をしなくてはならない場合があります。
◆ 併発しやすい病気
脳や心臓の血管が詰まることで起こる脳梗塞と心筋梗塞。そして、癌、アルツハイマー病も糖尿病の人は発生率が高いとされています。
◆ 食後に起こりやすい合併症
糖尿病の人は、空腹時でも血糖値が高いのですが、食後の血糖値は特に高くなります。合併症は、食後血糖値が高い程起こりやすく、特に心筋梗塞や脳梗塞は食後血糖値と深く関連していると言われています。
糖尿病の指標
◆ 血糖値
- 血糖=血液中のブドウ糖
- 血糖値=血漿1dl中に含まれるブドウ糖の量
健康診断では、空腹時血糖値を測定しますが、その数値が高い場合は、2次検査としてブドウ糖負荷試験血糖値(一定の条件下でブドウ糖を服用した2時間後の血糖値)を測定します。
【血糖値の診断基準】
空腹時の血糖値 | 食後2時間後の血糖値 | |
---|---|---|
正常型 | 60~110mg/dl未満 | 140mg/dl未満 |
境界線型 | 110mg/dl以上~126mg/dl未満 | 140mg/dl以上~200mg/dl未満 |
糖尿病型 | 126mg/dl以上 | 200mg/dl以上 |
※ 境界線型が糖尿病予備軍のことです。
◆ HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)
- 正常 4.6%~6.2%
- 糖尿病型 6.5%以上 ※ NGSP値(国際標準値)
血液中のブドウ糖とヘモグロビンが結合したものです。ヘモグロビンとは、赤血球の中にあるタンパク質で、120日(4ヶ月)間、体内を巡りながら徐々にブドウ糖と結合していきます。余っているブドウ糖が多いほど、ヘモグロビンとの結合が増え、HbA1cが多くなります。HbA1c値は、赤血球の寿命の半分くらいにあたる期間の血糖値の平均値です。
低血糖
- 血糖値が70mg/dl以下になると、異常な空腹感、生あくび、かすみ目、手足の震え、冷汗、動悸などの症状が出てくるので要注意です。
- 低血糖を放っておくと、倦怠感、無気力、頭が重い、考えがまとまらないなどの症状が出きます。
- 血糖値が30mg/dl以下になると、意識レベルが低下するので、異常行動、意識消失となり、最悪の場合は、昏睡状態から死に至るので、呉々も早めの対処をして下さい。
インスリンとは
血液中のブドウ糖(血糖)を少なくする(=血糖値を下げる)ただひとつのホルモンです。膵臓のランゲルハンス島のβ細胞で作られるものです。
◆ 基礎分泌
生命維持のため、からだの細胞は、エネルギーの源であるブドウ糖をつねに消耗しています。食事でブドウ糖(糖質)を摂れない空腹時は、エネルギーを確保するために、肝臓に蓄えられたグリコーゲンを糖に分解し、全身の細胞に放出します。その際、肝臓からのブドウ糖の放出量とブドウ糖の消費量を調整するため、一定量のインスリンが分泌される。これを基礎分泌と言います。
◆ 追加分泌
食事でブドウ糖(糖質)を摂ると血糖値が上昇。すぐにインスリンが追加分泌され、肝臓からの糖の放出は抑えられ、肝臓へ糖の取りこみを促します。約半分の糖は肝臓に取り込まれ、残りの糖は筋肉細胞や中性脂肪に換えられて脂肪細胞として蓄えられることで、血糖値が下がります。
インスリンの基礎分泌と追加分泌により、空腹時の健康な人の血糖値は70~100mg/dに保たれます。
糖尿病の食事療法としての糖質制限
◆ 血糖値を上げる糖質を控える食事療法
従来の糖尿病食は、カロリー制限を重視した炭水化物の糖質中心(糖質60%、脂質20%、タンパク質20%)の食事療法なので、食後血糖値をおさえるどころか上げてしまいます。一方、糖質制限は、血糖値を上げる糖質を控え、タンパク質と脂質をタップリ摂る食事療法(糖質20%、脂質40%、タンパク質40%)です。
◆ 血糖値を上げるのは糖質だけ
食品の中で血糖値を上げるのは糖質だけです!低カロリーの食品でも糖質が多いと血糖値は上がってしまいます。糖質を控えることで、食後の血糖値の上昇を抑制し、血糖値を下げるインスリンの追加分泌も減少します。
◆「糖質制限」で肥満も改善
インスリンの追加分泌が減ると、脂肪の分解を促進します。そして、脂肪をエネルギー源にタンパク質からブドウ糖(糖質)を合成する糖新生が進み、基礎代謝が向上します。基礎代謝が高い程、消費エネルギーが多く必要になるので痩せやすくなり、肥満も改善されるということです。
以下の記事を是非、ご一読下さい。
糖尿病の15のチェック
糖尿病の初期は特に自覚症状がないので、気がつかない場合が多くあります。こんな症状がでていないか、チェックしてみましょう。
- のどがとても渇き、水をよく飲む。
- 甘いものが急にほしくなる。
- お腹が空いてよく食べるわりに、やせた。
- 最近太ってきた。
- おしっこの回数が増え、量も多い。
- おしっこが出にくく、残尿感がある。
- おしっこのニオイが気になる。
- 全身がだるい。疲れやすい。
- 立ちくらみがある。
- 足がつれる。足がむくみ重い。
- 目がかすんだり、黒い点が見えたりする。
- ちょっとした傷が治りにくい。
- ちょっとしたやけどや傷のいたみを感じない。
- 肌や下腹部がかゆい。肌がかさつく。
- 男性の場合、性機能の問題(ED)が生じる。
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