去る10月26日、Pocorin主催によるはじめての糖質制限セミナーを、参加者が質問しやすい少人数制で開催した。今回のテーマは「太る原因は血糖値を上げる糖質の多い食品」。(恥ずかしながら)講師は筆者だ。
参加者は、まだ内輪だが看護師、鍼灸医、英会話講師、料理の達人主婦。うち2名は、昨年(2015年)11月末に筆者が糖質制限の指導を行い減量に成功した。残りは、減量と体質改善を目的とする糖質制限ビギナーだ。
「カロリー制限ダイエットでは殆ど痩せなかったのに、糖質を控えるだけで、ひもじい思いをせずに、短期間で本当に痩せるだけでなく、中性脂肪や高血圧まで正常になった」糖質制限支持者になった二人の感想だが、参加者と対話することで、いろいろと課題が見えてきた。
30代の鍼灸医Uさんは、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の体型で、動脈硬化が進み、40代以降の糖尿病などの生活習慣病が危惧される。
さて、セミナー前に参加者にお願いした1週間の食事メモから、Uさんの食生活をチェックしてみると、男性にありがちなメタボ体型になる糖質過多の食生活だ。※赤太字はすべて糖質の多い食品
朝食:ジャム付きの食パン、加糖コーヒー
昼食:海鮮丼
夕食:とんかつ、ごはん、ノンアルコールカクテル
朝食:目玉焼き、ベーコン、ごはん
昼食:焼きそば、クッキー6枚
夕食:カレーライス2皿、ポテトサラダ、加糖コーヒー
丼物、ラーメン、焼きそば、焼きめし、カレーライスなど、多くの男性が10代から食べている馴染みの品目だろう。しかし、糖質が70gを超えるものばかりだ。
メタボリックシンドロームの予防には減量は必須
3ヶ月で10kg以上の減量効果が期待できるので 、3食ごはん抜き、麺、スイーツなど糖質の多い食品は極力控える スーパー糖質制限(糖質30g~60g/1日)を奨めたが「とんかつは好きだからごはんが進む。やれるかな~」というUさんの反応だ。
メタボの人ほど「のんきタイプ」が多く、自覚がないので体の悲鳴が聞こえない。
「やる気半分」の ビギナーへのアドバイス
- 食物繊維が腸での吸収を抑えるので、まずは(イモ類、根菜以外の)野菜から食べる。
- ごはん(おにぎり)、パン、フルーツを最初に食べるのもNG!
- よく噛む。早食いは絶対にNG!
- 野菜の次は肉などのおかず。ごはんは最後!
- 間食にはナッツ(クルミ、アーモンドなど)やチーズを!
- 朝食を抜かない。糖質制限の昼食であれば問題ないが、朝食抜きで糖質の多い昼食を摂るのはNG。
- 糖質を摂ってしまったら、食後に脚を動かす動作を入れた軽い運動をする。
◆コンビニで購入できる低糖質の食品は、パック入りのチキン等の肉おかず、サラダ、唐揚げ、チーズ、ゆで卵、おでん(練り物はNG)、ナッツ。パンを食べたい時はLowsonのブランパン。
◆カレーライスは、ごはんの代わりに豆腐、ブロッコリー、きのこなどの野菜(根菜はNG)で食べる習慣を付けて欲しい。
◆ 肉は摂って欲しいが、糖質の多い衣があるとんかつは約11.3gの糖質だ。とんかつソースをかけるとさらに糖質量が多くなり、ごはんが欲しくなるだろう。肉類は塩とコショウでシンプルに焼いて欲しい。
糖質制限実践者の英語講師Sさんは、週末にジムで筋トレやダンスをして体を鍛えていたが、加齢と共に太り始めた。
昨年11月のアドバイスで、夕食のごはんはもともと食べないので、糖質の多い日本酒とビールの晩酌を、焼酎と糖質オフビールに替えた。彼女の食事をチェックすると、脂質とタンパク質をもっと摂った方が美しい痩せ方ができるので、バラ肉などの脂身のある肉、チーズ、ナッツ、オイル類をもっと摂るようにアドバイスをした。
ジムで測定する2014年(54歳)~2016年(56歳)のInBodyデータを持参してくれた。これを見ると糖質制限の効果がはっきりわかる。2014年~2015年、糖質制限を始める前には、食べる量を減らしたが、ほとんど効果がなかったそうだ。
減量効果だけでなく、血圧が高めだったので薬を服用していたが、血圧も正常になり今年は薬の世話になっていないそうだ。
糖質制限前
2014年:体重48.6kg 体脂脂肪率28.2% BMI22.2 腹囲73cm 体年齢58歳
2015年:体重47.2kg 体脂肪率25.9% BMI21.5 腹囲71cm 体年齢52歳
糖質制限6ヶ月目
2016年:体重43.5kg 体脂肪率19% BMI19.9 腹囲66cm 体年齢37歳
看護師Iさんは、糖質制限でスリムになったが、途中から糖質制限ルートから脱線した。
控えて欲しい食品群を自己解釈して体に良いと思い込み、糖質の多いハチミツをかなりの量で使っていた。さらに、減量に成功した気のゆるみと反動で、今年の6月位から糖質の多い寿司、パスタ、うどん、おかしなどを、低糖人とは云えない量で食べていた。
9月の検査で、体重は維持できたが、中性脂肪が大幅に増加してしまった。「中性脂肪が増えるのは、糖質の摂りすぎであり脂質ではない」と理解していたはずが、脂肪悪玉説に考えが逆戻り。脂質の多い脂身の肉、オイル、バターなどをほとんど摂らなくなった。
糖質を摂るとアレルギー体質になりやすくなるが、顔や腕に赤い湿疹ができた姿で出席。
セミナー以後にも食事の詳細メニューを聞きだしがなら、これらの症状が糖質過多だと説明。さらに吉田クリニックの吉田先生が教えて下さった「中性脂肪の数値は、測定するタイミングによりかなり変動する」アドバイスも伝え、正しい糖質制限をやる再決意をしてくれた。
人生ゲームのように、3歩前進、1歩後退だ。
誰にでも起こりうる彼女の体験談は、次回の糖質制限実践中に掲載予定だ。
お好み焼き、中華料理、煮物、炒め物の工夫
糖質の多い食材を学んでいる最中に、料理で使用できる低糖食材や料理法などの質問も出てきた。
- 糖質の多い小麦粉、山芋の生地が問題なお好み焼きは、低糖質のおから粉を使うといい。また広島風にクレープのように薄い生地の上に、キャベツやネギ、肉、卵、チーズなど(麺はNG)をのせる。
- 中華料理は、糖質の多い片栗粉の出番が多い。そこで、片栗粉の代わりになるオオバコが原料のサイリウム粉を紹介した。少量でとろみが出る。ネットで購入可能だ。
- 煮物でよく使うレンコン、ごぼう、人参、里芋、はんぺんなどの練り物、みりん、砂糖、日本酒は、すべて糖質の多い食品だ。こんにゃく、しいたけ、大根、カブ、竹の子、冬瓜、糖質ゼロの甘味料ラカントS、低糖日本酒はOKだ。
- 市販のダシ醤油はみりんや砂糖が入っているモノがあるので栄養成分表示は必ずチェック!出汁を取った昆布も糖質が多くなる。
- 炒め物は、肉、ニラ、もやし、葉もの野菜などの食材使用であれば心配はない。糖質制限ではたっぷり脂質を摂って欲しいので炒め油にラードを奨めた。しかし参加者全員が「えっ!ラード?!」という反応だ。脂の固まりラードがそのまま脂肪になることはない!脂肪の原因は糖質だ!どうしてもラードに抵抗ある方は、オリーブオイルを。ただしベジタブルオイルはなるべく使用を控えて頂きたい。
参加者の意見を真摯に受けとめて
後日料理の達人主婦Nさんが、おから粉を生地に、キャベツ、卵、豚、イカ、紅しょう、チーズ入りのお好み焼きを届けてくれた。糖質4.7g(大さじ1)のウスターソースは微量なので低糖お好み焼きだ。とても美味しかった。
「次回のセミナーには、教えて頂いた糖質ゼロの甘味料ラカントSを使ったスィーツが上手くできたら持参します」と、料理上手な参加者は、糖質制限レシピが増えるのでありがたい存在だ。
「日頃食べている食品を(料理をする立場で)細かくチェックしてほしい」
「定期的な会があると糖質制限のやる気が持続できる」
「病院は血液検査の結果が悪いとすぐに薬を出すから、食事で体質改善をしたい」
「インターネットが上手くできない人のために、直接学べる場所がほしい」
参加者の意見を真摯に受け止めて、ただ聴いてもらうのではなく、ささいな疑問、質問などにも対応できる少人数制セミナーになるよう努めたい。糖質制限セミナーは今後定期的に関西で開催し、来年からは糖質制限推奨医師による指導も予定している。
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