コーヒーは糖質ゼロ飲料(ブラックの場合)なので、糖質制限推奨医師や実践者(筆者もその一人)の多くが、愛飲しています。そこで、ほっこりと一杯の珈琲を飲みながら一読して頂くと、美味しいコーヒーを淹れられるようになるお話です。
自家焙煎珈琲豆専門店 すぎた珈琲
穫れたての新鮮な野菜がおいしいように、焙煎したて、挽きたて、淹れたてと三拍子そろったコーヒーの味は格別ですね。
今回、日本各地から自家焙煎珈琲豆を取り寄せている筆者が、忘れられない味と魅了されたすぎた珈琲を訪れ、美味なる珈琲を探究していらっしゃる杉田光雄さんからお話を伺いました。
自衛隊員から珈琲スペシャリストになったというユニークな経歴の杉田さんは、自衛隊除隊後に飲んだ一杯の『マンデリン・トバコ・コーヒー』の美味しさに感動、コーヒーに関わる仕事こそ天命だと気づき、この道に入ったそうです。
すぎた珈琲は、古墳が点在する奈良県平群町(へぐりちょう)にあり日本中にファンがいる知る人ぞ知る名店です。自家焙煎珈琲専門店なので喫茶はできませんが、近くの 道の駅大和路へぐり で、杉田さんが淹れる美味しい珈琲を飲むことができます。また、随時、イベントにも出展しています。
道の駅 出店日
金曜日を除く10:00-16:30頃まで。
3つの美味しさの秘密
数ある自家焙煎店の中で、すぎた珈琲の焙煎豆が際立っているのには、やはり訳がありました。
上質の生豆
世界市場でわずか5%しか流通しない上質のスペシャルティ珈琲生豆のみを仕入れしています。
スペシャルティ珈琲
世界各国で開催されるカッピング・コンテストにおいて「フレーバー」「あと味の印象」「酸の質」「口に含んだ質感」「甘さ」「ハーモニー均衡性」などの総合評価が、85点以上(2016年度から86点以上)のものを〈トップ・スペシャルティ〉、80点以上のものを〈スペシャルティ〉と呼ぶそうです。
卓越した五感の持ち主による(目利き)素材の厳選
奥様のゆき江さんは、特に優れた味覚と臭覚の持ち主なので、食品に含まれている添加物や、化学肥料、残留農薬に対して拒否反応を起こします。その特質を生かして、スペシャルティ珈琲生豆の中でも特に優れたものを厳選します。
焙煎職人の技と感
選び抜かれたスペシャルティ珈琲生豆を、杉田さんが豆の個性と焙煎量に合わせて的確に焙煎します。
こだわりの焙煎豆
約20種類の珈琲生豆をから、常時12種類ほどを焙煎して店頭で販売しています。希望の豆があればすぐに焙煎して下さいます。
それでは、杉田さんが感動したマンデリン・トバコを含む4種類をレビューします。
マンデリン・トバコ 〈スペシャルティ〉
杉田さんが『マグマの味』と形容する、一度飲んだら忘れられない味の深煎り豆です。インドネシア・スマトラ島マンデリン族が住むトバコ湖周辺は、高品質の珈琲ができる赤土の火山灰土壌で、希少なティピカ系の樹が多く残っています。霧の発生が多く乾季でも降雨が時折ある季候が、独特な味わいを生んでいるようです。
フロレンシア農園 〈トップ・スペシャルティ〉
2年連続カップオブエクセレンスを受賞。定番で一番人気です。華やかな薫り、甘み、酸味の素晴らしいバランスのあるグアテマラ産の中煎り豆です。面白いのは、淹れたてのコーヒーを3分間かぐと『夫婦仲が良くなる珈琲』とお客様の間で評判になっているそうです。
モカ・イルガチェフG1(Grade 1) 〈トップ・スペシャルティ〉
定番で2番人気のエチオピア産の中浅煎り豆。フルーティーでクリアな風味です。美しい川、森、湖に囲まれたイルガチェフ地区で、伝統的な水洗処理、天日乾燥により丹念につくられた心まで澄み渡る逸品だそうです。ただ、イルガチェフは有名になりすぎて、肥料と農薬を与えて量産した偽物が多いので注意して下さい。こちらは『目覚めがよくなる珈琲』だそうです。
エル・トリウンフォ 〈スペシャルティ〉
高温高圧でカフェインレスにしたメキシコ産中煎り豆。有機栽培のディカフェ珈琲豆なので、妊婦さんにもお奨めです。カラメルのような甘さと伸びやかなあと味、シトラス系の酸味が印象良く、ディカフェとは思いないバランスの良い珈琲です。
季節限定品などもあるので、ウェブサイトでチェックしてみて下さい。通常の珈琲販売店ではみかけない焙煎豆が揃っています。
ブレンド珈琲に関して
すぎた珈琲はブレンド珈琲を販売していません。「ブレンドというのは、もともと単一銘柄だけでは風味が不足するのでそれを補うためのものです。」「すぎた珈琲のスペシャルティ珈琲は、個性がすばらしいので、ブレンドするとせっかくの風味が損なわれてしまいます。」とおっしゃる杉田さんですが、ブレンドを希望される方には豆の相性をみて提案するそうです。
バターコーヒーに合う珈琲豆
糖質制限では脂質摂取が欠かせませんが、脂質のバターを入れるバターコーヒーを一度試してみて下さい。コーヒーとバターの組みあわせは、油っぽいと思われがちですが、バターの香りもほどよくカフェラテのようで、スムーズに飲んで頂けると思います。無塩バターをご使用下さい。またバターはすんなりと溶けるので泡立てなくてもおいしく召し上がって頂けます。
バターコーヒーに合う珈琲豆は、マンデリン・トバコ、フロレンシア農園など濃厚な味がよく、酸味のあるモカ・イフガチェフG1などは向かないそうです。
アラビカ種とロブスタ種
おいしいコーヒー豆はアラビカ種ですが、病気に弱く、かつてセイロン島で全滅したこともあるそうです。一方、病気に強いロブスタ種は、アラビカ種より味が劣るのですが、大量消費用のコーヒ-豆として香料を加えて、缶コーヒーやインスタントコーヒーに使われているそうです。美味しさの点だけでなく、健康のためには豆から煎れたコーヒーを飲んで欲しいものです。
美味しいドリップコーヒーの淹れ方
杉田さんは、珈琲の抽出方法もかなり研究されたそうですが、普通の人が美味しく淹れられる方法は、衛生面、簡易性、コスト的にみてペーパーを使ったドリップコーヒーをお奨めしています。
1. ドリッパー、サーバー、カップをお湯で温めておきます。
2. ペーパーのつなぎ目を折り曲げて、ドリッパーにぴったりと装着します。
3. 抽出するコーヒーの量に併せて粉をドリッパーに適量入れます。
ポイント
抽出するコーヒー量と粉の分量は、計量スプーンで一人分1杯、二人分2杯・・とはなりません。抽出するコーヒーの分量が多いほど、ドリッパー中のコーヒー層が厚くなり濃い味になるので、粉の分量を少なくして濃さを調整すると美味しくなるそうです。
- 1人分(120ml)… 粉15g
- 2人分(240ml)… 粉20g
- 3人分(360ml)… 粉30g
- 4人分(480ml)… 粉40g
- 5人分(600ml)… 粉50g
4. 沸騰したお湯をまわりからコーヒーの粉にまんべんなく注いで、
ドリッパーにフタをのせて2分~3分蒸らします。
5. 85度のお湯が入ったドリップポット(注ぎ口の長いポット)の口をなるべく、
コーヒーに近づけて中心部分からゆっくり注ぎます。
ポイント
注ぐコツは、下に落ちるスピードと注ぐスピードを一定にします。高いところからお湯を注ぐ入れ方もありますが、注ぐお湯に加速がつくと、コーヒーがかくはんして雑味とえぐみが出てしまいます。プロでない方にはお奨めしません。
6. 抽出するコーヒー量の2/3まで注ぎ、残りの1/3は沸騰したお湯で薄めて完成です。
ポイント
ドリッパーに注いだお湯が残っていても、サーバーに2/3まで抽出できたらドリッパーはサーバーから外してください。
コーヒーの保存方法〈豆の状態〉
杉田さんは、一人一人の珈琲豆の消費スピードで保存方法を指導するそうですが、保存期間の目安は焙煎した日から一ヶ月以内に飲みきって欲しいそうです。挽いた豆は酸化が早いので2週間以内で飲んで下さい。
- 湿気、直射日光を避けて保管して下さい。
- 22度以上の温度がある場所では、必ず気密性の高い容器に入れて冷蔵庫で保存して下さい。
- 一ヶ月以上長期保存する場合は、気密性の高い容器にいれ冷凍庫で保存して下さい。
※注意
保管容器の気密性が悪いと、冷蔵庫、冷凍庫のにおいを吸って風味が変わってしまいます。
冷蔵庫・冷凍庫から出した珈琲豆は、使用量だけ取ったらすぐに元へもどして下さい。温度変化で水滴がつくと珈琲豆が一度で劣化します。夏は特に注意が必要です。
焙煎後の飲み頃〈豆の状態〉
焙煎の度合いや保存方法、生豆の種類により飲み頃は変化するそうですが、以下の日数を指標にして下さい。保存と同様に、挽いた豆は、飲み頃日数も早くなります。
- 1~3日 … 珈琲の焼香は楽しめますが、ガスが抜けていないので、しっかりした味になりません。
- 4~14日 … 特に美味しい珈琲が楽しめます。
- 15~30日 … この期間も珈琲は美味しいです。エスプレッソには最適です。
- 30日以降 … 酸化が進むので、珈琲の味が落ちていきます。
珈琲と水
おいしい珈琲には、水選びも不可欠な要素です。 杉田さんは、3つの要素をクリアした水をお奨めしています。
■ 不純物のない純水
珈琲は不純物が含まれていればいるほど、渋味、エグ味、苦味の原因になります。鉄分などのミネラル分、水道水に含まれる塩素、井戸水などに含まれるバクテリアなどの不純物が入っていない水は必須です。
■ 水分子(クラスタ-)が細かい水
水分子が細かければ細かいほど、水の溶解力が増します。石灰質などで研磨された水は珈琲をよりまろやかに濃密にしてくれます。地元奈良県大峰山の鍾乳洞で半世紀の時をかけて湧く名水百選の ごろごろ水 が、クラスターが細かい水だそうです。しかし、そのまま飲んでおいしいわき水が、コーヒーに合うとは限らないそうです。
■ 弱アルカリ水
珈琲の味を存分に引き出してくれるのは、弱アルカリ性の水です。
スーパーなどでは、ピュアーウォータ-として販売しています。浄水器は、電解水素水(還元水)をつくるものがお奨めだそうです。
コーヒーの効能
1日に3杯から6杯のコーヒーの摂取でいろいろな効果があることが確認されています。また、煎じた漢方薬の効き目が良いように、コーヒーの効能もフレッシュなコーヒーの方が効果は高いようです。
「コーヒーにより感受性がよくなった。」「脳にダメージのある人がコーヒーをよく飲むと脳が活性化している。」と自衛隊時代の過酷な訓練で記憶力が低下した杉田さん自身も、コーヒーの効能を体感しているそうです。
コーヒーの主成分は、クロロゲン酸(コーヒーポリフェノールの一種)、カフェイン、トリゴネリンなどです。尚、トリゴネリンはどの珈琲豆にも含まれていますが、浅煎り豆の方がトリゴネリン残留度は高いそうです。
それでは、その効能を見てみましょう。
■ 覚醒作用 疲労回復 〈カフェイン効果〉
大脳皮質に作用して神経機能、知覚機能を刺激して、眠気や疲労感を取り除き、集中力を改善します。
■ 脂肪燃焼 脂肪分解促進〈クロロゲン酸〉
皮下脂肪の分解を促進し血液中の脂肪酸を増加させます。
■ 糖尿病の予防〈クロロゲン酸〉
糖分の吸収を遅らせる働きがあるので、血糖値上昇がゆるやかになります。動脈硬化や糖尿病を予防します。食前のコーヒーは効果的です。(ただしブラックのみ)
■ ガンの抑制〈クロロゲン酸〉
活性酸素を除去し、過酸化脂質の発生を抑え、肝臓がんや消化器官のガンを予防します。
■ 認知症の予防〈トリゴネリン〉
神経系に作用し、特に脳神経を活性化するので、痴呆やパーキンソン病の予防効果があります。
■ 抗酸化作用〈クロロゲン酸〉
体のさび(酸化)を防ぎアンチエイジング効果があります。
コーヒーのアロマ(かおり)
コーヒーのアロマ(かおり)成分も、抗酸化作用があるそうです。ただ、残念なことにわずか5分でかおり効能はなくなります。
種類によって脳にあたえる効果が違うこともわかってきました。ブルーマウンテン、グァテマラはリラックス効果が、マンデリンやハワイ・コナは、情報処理速度が速くなるようです。
さて、コーヒーブレイクの終わりに、毎日焙煎を続けている杉田さんらしいお話を・・・
焙煎のけむりからコーヒー成分のカフェインが髪の毛や腕などにつき吸収されるので、焙煎後は体を洗浄しないと、コーヒーによるハイ状態になってしまうそうです。この状態は、品質の高い豆だからこそ、起こりやすくなるのではないでしょうか。
糖質制限を続けると味覚が敏感なるだけでなく、体のセンサーも良くなってきます。さて、次のコーヒーブレイクは、スペシャルティ珈琲豆で煎れた、体がよろこぶ珈琲はいかがですか。
自家焙煎珈琲豆店 すぎた珈琲
奈良県生駒郡平群町菊美台1-800-1
TEL &FAX 0745-45-0886
営業時間 10:00~18:00
定休日 金曜日(祝祭日は営業)
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